バリュー評価とはその名の通り「価値」に焦点を充てた評価制度であり、企業が設定する価値観に沿って行動できているかどうかという視点で評価を行います。企業の価値観を落とし込んだ行動規範を設定しておき、それをどの程度実践できているか、またどういった過程で成果を出せているかといったポイントで評価を実施します。勤続年数を重視する「年功序列」や結果重視の「成果主義」と異なり、行動やプロセスに注目するというのがバリュー評価の特徴となっています。
バリュー評価における大きなメリットとしては「企業の価値観を全社員と共有できるようになる」という点が挙げられます。企業の価値観に沿った行動規範を評価の前提として設定することにより、社員に価値観が浸透していき、昇給・賞与などに繋がることから自然と価値観を意識した行動を起こすようになるでしょう。
少子高齢化による労働力不足が叫ばれる昨今において、優秀な人材を確保することはどの企業においても課題として挙げられます。従業員に長く働いてもらうためには、企業に対する帰属意識や愛着を持ってもらうことは必要不可欠となるため、評価制度を通して価値観を浸透させられるバリュー評価は離職率の低下に貢献するでしょう。
バリュー評価は結果がすべてではなく、行動や過程が評価対象になります。どう考えどう行動したかが評価されることになりますので、社員自らが意識を持って考え・取り組むようになるでしょう。自発的な思考や行動を促せると、組織全体の生産性向上にもつながります。
バリュー評価の評価基準は数字に基づくような「定量的」指標ではなく、どう行動したか・どう考えたかなどのような「定性的」なものになってしまいます。そのため評価の前提となる評価基準を誰でも分かりやすいよう明確に設定することが難しいという側面があります。
評価の前提となる行動規範などを設定したあと、全社員にきちんと共有しておかなければならないという点も、場合によってはデメリットになるでしょう。数値目標であれば書面などで一方的に伝えるだけで完結しますが、行動規範となると読解力・理解力のレベルにより、うまく伝わらないこともあります。そのため、きちんと全員が理解できる体制を敷く必要があります。
バリュー評価は客観的な評価が難しいというデメリットもあります。どうしても評価・判断をするうえで主観的になってしまうことから、場合によっては評価を受ける社員自身が不満を感じる可能性があります。そのため、バリュー評価では評価基準を明確化する必要があります。
前述の通り、バリュー評価の課題として「主観的になってしまう」点が挙げられます。自分はできていると主観的に捉えている部下が、低評価を受けた際に「上司は自分のことが嫌いだから評価を悪くつける」といった不満につながる可能性があります。そのため評価者を一人にするのではなく、複数人設定することをおすすめします。評価者が複数人いることにより、評価のバイアスをケアすることができるようになります。
バリュー評価における評価基準は数値のような「誰が見ても同じ評価基準」ではありません。評価者の見方によって評価内容が大きく変わってくるおそれがある評価方法であるため、できるだけ公平な評価ができるよう項目ごとの段階評価を行う数値化するような評価基準の設定を行う必要があります。
バリュー評価を導入するにあたって最も期待される効果は、「従業員にバリューを浸透させること」です。そのため導入時にはただ制度として取り入れるだけでなく、バリューを設定した理由や背景、バリューを達成した時に得られるメリットにどのようなものがあるか、きちんと説明する場を設けるようにしましょう。これらを正しく従業員に理解させる事ができれば、ひとりひとりがバリューに沿った行動を自発的に行うことができ、企業へのロイヤリティも高まっていくでしょう。
人事評価制度は経営陣の姿勢や企業規模、働いている社員の特徴によって適した評価制度が大きく変わるため、「これが正解」というものはありません。「優れた評価制度」や「流行りの評価制度」という目先の評価に踊らされるのではなく、自社に適した評価制度を取り入れることで、企業価値の最大化を図りましょう。迷ったとき・困ったときにはその道の専門家に相談してみるのもよいかもしれません。下記から自社に合ったコンサルティング会社を探すことができますので、参考にしてください。
企業の成長段階に合わせた人事評価制度の導入は、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。人事評価制度を導入したい目的から選ぶのがポイント。おすすめのコンサルティング会社を3社ご紹介します。